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東京をアジアの金融ハブへ(1)

金融都市東京

香港の金融人材は東京に来るのか?

こんにちは。香港在住弁護士のマイクです。

今日本ではアジアの金融ハブになるべく再び熱い議論がなされてます。2020年6月、中国に香港国家安全法が成立してから、

①香港の優秀な金融人材が他のアジアの金融都市に流れる
②東京はアジアの金融都市の一つである
③よって香港の金融人材は東京に流れる

という見事な三段論法で、これを機に香港、シンガポールに遅れをとっている東京をアジアの金融ハブにしよう、という議論ですね。香港のどさくさに紛れて漁夫の利を狙ってるようにも見えるけどまあそこは目を瞑るとして、これって本当にそうなる?

まず、大前提。「香港の優秀な金融人材が他のアジアの金融都市に流れる」という点。実際、友人のプライベートバンカーが香港からシンガポール(東京ではない!)に転勤になったし、そのほかにもいくつかそんな話は聞いてます。でも、コロナで移動が制限されていることを差し引いても、雪崩を打って民族大移動が起こっているという話は寡聞にして知りません。むしろ、国安法ができたからってここから出ていく理由なんてない、と金融業界の友人たちと話しています。彼らも含めて香港に集まる海外の金融マンは、香港が世界の資金運用のアジア拠点でありかつ中国でのビジネスのゲートウェイだから来ているのであって、香港に政治的自由(民主主義ではない。香港は民主主義を求めて活動してきたが、結局一度も民主主義は実現されなかった。ずっと英国の植民地だったのが中国の支配下に変わっただけ。)はおまけみたいなもの。日本で報道されているのとは逆に、香港の中堅層以上のビジネスマンは元々中国でのビジネスが重要な位置を占めており、むしろ国安法支持者のが多いくらいです。日本や海外の報道を見ていると、香港の民主主義は死んだ、自由は無くなった、将来は暗黒国家が待っているという論調のものが圧倒的ですが、これには強い違和感があります。確かにSNS、FB、Twitterのように公に発信するものに政府の批判的な内容は書かないようになった(それらの冒頭にまず「I Love China」と書くといいらしいという都市伝説がある)とか、民主派議員や活動家が逮捕されるとかはあるけど、香港ビジネスマンからはむしろデモがなくなって安心したという声が多く聞こえます。僕も含めてこれまでどっぷりと資本主義、自由主義、民主主義が絶対正義と信じて疑わないアメリカ覇権国家の世界で生きてきた者にとって、表現の自由が制限され、民主的な選挙もおこなわれない世界は前近代的で未発達な社会のように勝手に思っています。でも、香港という微妙にそこから離れた右でも左でもない世界から世の中を見ると、民主主義も一つの政治体制にすぎず、どちらが正しいという問題ではないことが見えてきます(アメリカや日本での自由主義経済が破綻しているという話も書きたいのですが、ここで書くと完全に脱線するのでタイトルを改めて書きますね)。中国は共産党の一党独裁政治ですが、一方で市場経済を取り入れた結果、民間企業も含め著しい経済成長を遂げています。そうなると経済界で仕事をしている僕らは社会主義も民主主義も関係なくビジネスチャンスがあるということになります。実際、アジアのもう一つの金融ハブで国家成長の鑑であるシンガポールは形式的には民主国家ですが、実質は一党独裁国家で「明るい北朝鮮」などとも言われてます。それに比べたら香港はまだ自由度が高いくらいで、何も悲観する要素はありません。グレーターベイエリア構想(https://www.bayarea.gov.hk/en/home/index.html)もあってこれから香港はますます面白くなる、国安法ができたから香港から逃げるっていう金融マンはバカだよなっていうのが友人たちと酒飲みながら語るときのいつもの結論です。

長くなったんで、続きは次回。